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第四話 会心のアガ3
おれの名前は賤機光(しずはたひかり)。雀荘を転々としてる長続きしないロクデナシさ。麻雀は強いって言われるけど、まあそれだけ敵も多い。ギリギリの所持金で勝負に来る客が多かったから、嫌われやすいのは当然だと思う。かと言って粗相するような下手くそだったらもっと嫌われるんだけどな。鉄火場で働くってのは難しいよ、まったく。
ここアクアリウムはその点、レートが安いからいくら勝っても誰もカッカしない。強いなー。と言われるだけ。これがすごくおれ向きだった。なのでここにはもう長い。気が付いたら静岡店の副店長にまでなって早番を任されている。
アクアリウムは最新の技術を導入しているのでパソコン作業の出来る者が重宝されるのだが、生憎とおれはケータイすらただの電話機として持つだけの本気の機械音痴なためおれの相棒には元システムエンジニアの小幡了(おばたさとる)が常にいた。
アクア静岡は店長は居らず、実質的には副店長のおれと小幡。反対番のチーフ2名の4人で指揮を取っている。(小幡には役職などないがアルバイトたちに頼りにされているのはおれより小幡だ。それはそうだろう。おれだって小幡のことを頼るくらいだからな)
おれと小幡は二人三脚で常に協力し合って働いた。早番はおれたちで盛り上げていくぞと。いつも頼りにしてるので小幡をチーフにしようとしたこともあるが「いや、責任者になるのはごめんだ。おれは気楽な立場で技術担当させてもらう。賤機さんの休みの日の卓回しくらいはするけど基本的におれはヒラでやってたい」と言うので小幡はほぼ最低賃金で雇っている。いまいち腑に落ちないがそれが本人の希望であるなら仕方ない、のか?
おれたちは家が近かった。ある日、近くの個人経営雀荘が警察の突入で営業停止になった時。その連絡を受けて警戒のためここもしばらくは24時に閉店する制度にすることにした。すると24時にあがった小幡が「帰りの電車がないんだが」と言う。本人も今日が休日ダイヤであることを失念していたようでおれは車で通勤してるから「わかった、送ろう。今日だけだぞ」と言い小幡の家へと車を走らせることになった。
カーナビに登録するために自宅住所を聞いたら驚いたことにそれはおれの昔住んでいた家のすぐ近くで、おれがいま住んでいるアパートともそんなに離れていなかった。
「なんだおまえ同じ町から来てたのか。もしかして西中卒業生か?」
「そうっす。賤機さんも?」
「ああ、おれのほうが4個上だから顔合わせてはないけどな。小学校も西小か?」
「いえ、小学校は東京でした。中学の頃にこっちに引っ越したんで」
車を走らせながらお互い同じ町の話題で盛り上がる。
「よし、そろそろ到着だな」
「賤機さん、良ければ上がって茶でも飲んでって下さいよ。どうせ両親はもう寝てるんで少し休んでって下さい」
「いいのか? 実は今ちょうど喉が渇いていてコンビニ寄ろうかと考えていたんだ。じゃあ、冷たいものもらえるかい」
家にあがると小幡の部屋は入ってすぐの所にあった。
「部屋で待っててください」
そう言われ部屋に入るとそこは本だらけの部屋だった。
「こいつ…… この量の本読んでんのか……? 漫画も多いが…… 難しいのもかなりあるな。ん? これは……?」
『攻める素直さと護る勇気 日本プロ麻雀師団第36期新人王 井川美沙都』
ガラッ!
小幡が烏龍茶を両手に持って戸を足で開けて入ってきた。
「ああ、それすか。井川ミサトのサイン色紙。賤機さんは知らないかもしれないけど一部のプロには有名な、玄人受けする女流プロで、おれは同郷のよしみで応援してんです。井川プロもおれも出身地は東京都台東区なんで」
「へえ、検索してみようかな」
「見てみてください。美人ですよ。そんで麻雀が上手い」
井川ミサトの動画を観る
「………!! ……すごい」
この時、おれはまさか麻雀を見ることで惚れるなんてことがあるとは思わなかった。
この日からおれは井川ミサトに惚れ込んだのだ。
そして、今――
「12000です」
あの井川ミサトから12000をあがってやった。それは今までの人生で最も気持ちのいい会心の※アガ3だった。
◆◇◆◇
※アガ3⋯三着終了確定のアガリ。つまり負け。最下位よりはマシという程度のものであり基本的にはあまり嬉しくはない。
64.第伍話 中野の最速対々二回戦A卓東家 中野雅也南家 飯田雪西家 井川美沙都北家 鳥栖大毅この座順でゲームスタート「ユキ、あなたもトップだったの」「ええ、私だって伊達にミサトの相棒をやってないからね」「私としても鼻が高いわ」 すると中野が黙っていられないという顔で会話に割って入ってきた。「おれも元プロ雀士だ。ただ見ていただけで見せ場も作れずにやられました。なんてわけにはいかない!」「そうよね、期待してるわよ。新人王」「C3リーグ優勝の実力を見せてくださいよ」「ぐぐぐっ! 完全に舐められてるな」「えー? なんでそうなるのよ。私はただ思ったことをそのまま言っただけよ」「まあ、私は若干舐めましたけど。所詮は一般人なのかなって。私たち『牌戦士』とは覚悟も違うだろうし」「ちょっと、ユキ! 失礼よ、謝って」「いや、すいません。でもせっかくの対局だからもうちょっと中野さんのカッコいい所見てみたいなと思って。中野さん達だってこのまま終わったら不完全燃焼じゃないですか? とは言え、花火大会は行きたいからもう半荘やる時間はないし」「焚き付けてくれたってことね。オッケー…… おれもそこまでされてジッとしてるような男じゃない。見せてやるよ。新人王の本気をさ!」「待ってました!」 ユキの挑発を受けて中野雅也のハートに火がついた。そこからはリーチに対しても怯まず押し返して、それでいて本命だけは押さえて。上手いことテンパイさせた。
63.第四話 これが勝負師 結局、曽根がアガリをとれたのは初めのハネマン一回だけでありその後はみんなして曽根をボコボコにした。プロ3人でよってたかってフルボッコである。「わかったわかったわかりました。格の違いはもうわかったから、お願いだからこの辺でやめて!」「こう言ってるし、中野さんはもうアガるの禁止でよくないですか」「よくねーだろ! 今おれ三着目だろうが」南3局曽根の最後の親番中野 29800点トキオ33100点曽根 3600点ミサト33500点 3人は三つ巴だった。なのでここで軽くアガリを取ろうとか考えない、むしろこの局。ここで決着をつけるように手作りするのがプロというものだ。それを3人とも分かっているのでこの局は誰も鳴かなかった。そして……「リーチ!」「リーチ」「私もリーチよ」 親の曽根以外の3人が一気にリーチ。曽根は親番ではあるがさすがに無理なものは無理なため『もうお手上げ』とばかりに現物を力無く放る。「ツモ」ミサト手牌三三八八八①②③11666 1ツモ 手を開いたのはミサトだった。「四萬切りリーチで三萬と1索のシャボ!」「3軒目のリーチなのにあえてツモり三暗刻なの?」「三萬が山にありそうだったからね。まあ、引けたのは1索なんだけど。それに、アナタたち強いからここで決着つけておくのが最善策だと思ったの。はい、2000.4000で私の勝ちね」 チャン
62.第三話 ミオちゃんの配信 トキオはダブ南を鳴いて打2索とした。トキオの捨て牌にはソーズが全く出ておらず、この2索が初めてトキオから出たソーズだった。 ジュリはトキオの手をチョロっと見に行ったトキオ手牌二三⑤⑤赤⑤44赤567(南南南) ドラ7(ポンテン8000かー) トキオは既にダブ南赤赤ドラの一-四萬待ちポンテンを入れていた。しかしトキオの仕掛けに対して一-四は危険牌であるので現状はすんなりアガれるか分からないな、とジュリはトキオの手を見ながら思った。するとミサトの手から4索が切られた。「ポン」打赤⑤(は?)トキオ手牌二三⑤⑤赤567(444)(南南南) ドラ7(え? 手を短くして、使えるドラを捨てて、待ちを変えることもしないってどういうこと?) 見てる方が混乱するような鳴きだった。しかし、これは対局者にしか分からない魔法なのである。曽根打一「ロン」「えっ!?」パタントキオ手牌二三⑤⑤赤567(444)(南南南) ドラ7「満貫!」「使える赤を捨ててる……?」「メンゼン祝儀のルールだからね。そこのルール表の通りにやるなら」 たしかに、この麻雀ルームは昔はフリー雀荘だったのか店のルール表
61.第二話 対決! 新人王vs新人王 川原田朱里(かわはらだじゅり)は中野雅也(なかのまさや)の有能な右腕だ。 彼女は言われるであろうことを先読みして動けるタイプの人間なので、あれよあれよと事が進んでいく。気が付いたら全てのサイドテーブルにキンキンに冷えた麦茶まで置いてある。A卓東家 中野雅也(なかのまさや)南家 金田朱鷺子(トキオ)西家 曽根博一(そねひろかず)北家 井川美沙都(ミサト)B卓東家 金子水景(ミカゲ)南家 鳥栖大毅(とすだいき)西家 飯田雪(ユキ)北家 鹿野沙織(しかのさおり)立会人 川原田朱里「ジュリはおれたちの勝負を見届けてくれ。おれが本物のプロ雀士だったって所を見せてやるから見逃すなよ」「わかりました」「「よろしくお願いします!」」 各卓ゲームを開始した。 A卓は35期新人王と36期新人王の対決だ。中野は麻雀プロを辞めて4年になるが一度は新人王にまでなった実力の持ち主だ。そう簡単には勝たせてもらえないだろうとミサトは警戒して挑んだ。「えー、みなさんやりながらでいいんで聞いてください。今回の勝負はチーム戦です。我々『カキヌマホールディングス』対『井川美沙都プロ率いる女流雀士チーム』はまず一回戦をA卓B卓に分かれて対局します。その結果で例えば課長が3位で曽根が4位だとしたとしたら二回戦A卓は課長B卓は曽根というように同卓した同じチームの相手とで順位が上の方が二回戦はA卓に、下の順位の方がB卓に行き決勝を行う半荘2回勝負です。終わったらチームトータル得点を計算して負けたチームがこの麻雀ルームの場代を持ちます。また、個人優勝した方にはここの売店で1番高いお
60.ここまでのあらすじ ミサトとユキはアクアリウム静岡店でゲストに呼ばれ、18卓ある店舗を見事期間中の3日間毎日満卓にした。2人は自分たちコンビを『牌戦士 三郷幸』と名乗る。牌戦士たちの旅は続く、次は一体どんな出会いがあるのやら――【登場人物紹介】井川美沙都いがわみさと主人公。怠けることを嫌い、ストイックに鍛え続けるアスリート系美女。金髪ロングがトレードマーク。通称護りのミサト日本プロ麻雀師団所属獲得タイトル第36期新人王第35期師団名人戦準優勝など飯田雪いいだゆき井川ミサトの元バイト先の仲間でありミサトのよき理解者。ボーイッシュな髪型、服装をしているが顔立ちはこの上なく女の子で可愛らしい、そのギャップが良い。金田朱鷺子かねだときこ新宿でゴールデンコンビと言われる2人組。生物学的には女だが、見た目は美男子で『トキオ』の名で通っている。通称TKOのトキオ。麻雀真剣師団体ツイカの1期生。新宿ゴールデン街で店をミカゲと共同経営している。金子水景かねこみかげトキオと2人でゴールデンコンビと言われる一流雀士。通称隠密ミカゲ。麻雀真剣師団体ツイカ1期生。新宿ゴールデン街で店をトキオと共同経営している。 普段は分厚いメガネをしててダサめな姿だが、メガネを外しコンタクトにするとすごく美人。その4第一話 偶然の再会&n
59.サイドストーリー3 約束後編 彼女が開いて連絡先交換をしようとしてる携帯電話の待ち受けは『松潤』だった。僕は自分で言うのはちょっとアレだが松潤に似てると言われてきた。それは10回20回程度のことではなく、「ありがと、もう分かったよ」と言いたくなるくらい色々な人から言われることだった。つまり、その待ち受けを見ることで本当に僕の顔が好みなんだとわかった。 そして、この子のことは僕も好きになりつつあった。いや、好きだった。連絡先の交換はしたい。付き合いたい。また、この子に絡みつくように抱きしめられたい。そういう気持ちになった。一瞬だけど。 でも、僕は彼女持ちだ。裏切りたくない。かと言ってこの子がすんなり引き下がる言葉ってなんだろう。「連絡先交換くらい良いじゃない」と言われそうだ。その通りだとも思うけど、ここで交換したらそのままお付き合いに発展する気しかしなかった。自分のことは自分が一番わかる。「……もう一度会ったら」「え?」「僕は多分この店にはもう来る機会はない。それでも偶然どこかであなたともう一度会ったら。その時は運命だと思って連絡先を交換すると約束する」「わかった、約束よ!」「約束だ」 ◆◇◆◇ 6年後 僕は渋谷にいた。 今から帰ろうと駅前の大森堂書店に少し寄り道してから交差点に向かう時。とっても素敵な笑顔でベビーカ